あの、摩擦の少ない、やり直しのきかないアイツ。
けど美しいので使ってしまう。
実は、最近、arts&science mens shopのショウウインドウのディスプレイをさせてもらえる機会をいただいて、閉店後から翌日の開店前までの時間で展示するという作業をした。
モノを置く作業であればさほど時間のかかるスペースではなかったものの、そこに設置しようとしたのが「吊り」作品だったため、エンドレスな時間を費やす羽目になった。
そのあまりの困難さを3人のスーパー助っ人に助けられて乗り越え、なんとか設置できた暁には、飲めないビールも飲めるというもの。
その作品は「Tip of Tip of The Iceberg」という作品で、日本語でいうと「氷山の一角の一角」。
この同じタイトルで同じ作品をいくつか作っているほどこの言葉が好きで、この、少しだけ見えているものから全体を感じるイメージが、自分のものの見方にフィットする。
私にとってこれは、結局見えていない、という、見ることへの否定ではなく、見ていることと知るということの関係を受け入れるということで、新しい角度で「見る」ことと、「見る」ことそのものへの興味を呼び覚ます鍵のような存在。
眼鏡用の度の異なるレンズを繋いで大きな眼鏡を作り、それを「tip of the iceberg」という言葉の上半分(Tip)だけが見える水平線になぞらえたシートの前の空間に浮かせる作品。
どれだけ目を凝らしても、どの角度から見ても、どのレンズで矯正しても、見えるのは氷山の一角の一角だけ。
それは諦めではなく、新しい知覚。