8.15.2010

二時と隕石と雨、花と結晶と水

曖昧でありながら、なにものかが現れ出る時間、二時。
六月に温まり始めた地表がようやく八月に本格的に熱を放出し始める夏のように、
本当に寒いのが冬至を数十日も過ぎた1日であるように、その始まりは「今」ではない
それはなんでもないことであり、どうにもできないことでもある
それは、それが始まるまで、それが始まることを、始められたことですら自覚できず、客観視もできない
待っていればいいというのでもなく、始めようとすればいいのですらない
それは溜まり、満ち、溢れるものでしかなく
始まりには始まりは無い
しかしそれでもそれは始まるのだ


流れ星のうち、特に大きいものは空気との摩擦熱で燃えつきることなく、地上にたどり着く
隕石だ
空には轟音と共に燃え盛る火球が現れ、空から石が落ちてくる
時には贈り物のように、時には雨のように
表面は大気との摩擦熱で溶けた黒い皮で覆われ、中には多くの金属が含まれる
金属が磁石に引きつけられるように、
まるで事件と自然現象のちょうど真ん中に、重力との約束によって
そうだ、とばかりに突然に、隕石が落ちてきた


前線付近では、上空へ水蒸気が運ばれ、背の高い雲 が発生しやすくなるため、雨が降りやすい状態になる
北側の冷たい空気と南側の暖かい空気が地表面で接しているところで、冷たい空気と暖かい空気の境界面は上空に伸び、空気は混ざり合う
うす曇の空は本曇りとなり、焦点深度は深く、植物の呼吸は浅く変化し、人々は埃に酔う
ガラスは収縮し、プラスチックは温度を変える
麻は木綿の性質を模倣するかのごとく湿気を帯び、木綿は蚕の夢を思い出そうと必死に喘ぐ
鏡は黒ずみ、鉄は臭いを放つ
そして、
雨が降り出した


花芽が分化し、葉の形成は生殖成長に転換され、花芽は蕾へ
太陽が光を彼らに注ぐ時間と、光がどれだけ彼らを温めるかにより蕾の発育は左右される
夏に分化し、越冬するものは、葉から送られる眠り薬で成長をごまかされ、
そのうちまた葉から送られる気付け薬で春に目を覚ます
日照時間の増加と共に頭ははっきりと冴え渡り、もう黙っていられなくなる
もう閉じていることはできない、
開かないでいることができないと
花は咲いた

原子が規則正しく並んだ結晶の構成と生成には数十時間から数億年までの時間を要する
水や水晶など、ガラス以外の多くの物質が結晶化する
形を得ようと時間を費やし、それを得た途端、呼吸をやめる、
もしくは、不変でありつづけることを決意することにも似て、
それは結晶化した


水が溢れ始めた
ガラスの器に入れていたからだ
その器に切れ目無く、際限なく、永遠に水を注いでいたからだ
水を注ぐ音はまったく鼓動と同じリズムだったので、気づくことはなかった
誰も、水も、グラスさえも
どの観察者から見ても光の速度は一定でありながら、速度が光速に近づくにつれ、時間が歪められるように、
「溢れる」という観察者をもって初めてそれは知覚された、
ああ私は器を持っていたんだと、そして水をそこに注いでいたんだと
水が溢れた
水が溢れ始めた
水が溢れ始めたことを知った
全ては過去形だったのだ
















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数年前に書いた詩をふと載せたくなったので。